ますよ。)

(さあ、二時までぐっすりやるんだぜ。ねむらないとあしたつかれるぞ。はてな、となりへ誰《たれ》か来てゐるな。さうだ、土間に測量の器械なんかが置いてあった。)
 青いきらびやかなねむりのもやが早くもぼんやりかゝるのに誰かどしどし梯子《はしご》をふんでやって来る。隣りの室《へや》をどんと明ける。
「やあ旦那《だんな》さん。ぶん萄酒《どしゅ》一杯やりなさい。」
「葡萄酒《ぶんどしゅ》? 葡萄酒《ぶだうしゅ》かい。お前がつくった葡萄酒かい。熱《あたた》めてあるのかい。」
「まあ一杯おあがりなさい。さうです。アルコールを入れたのです。」
「アルコールを入れたのか。あとで? 作ってから?」
「さうです。大丈夫ですよ。本当のアルコールです。見坊《けんばう》獣医から分けて貰《もら》ったのであります。」
「どうして拵《こさ》へたんだい。野葡萄を絞ってそれから?」
「いゝえ、あとで絞るのです。まあ、おあがりなさい。大丈夫であります。」
「さうか。そんなら貰はうか。おっと、沢山だよ。ふん、随分入れたな、アルコールを。」

「ずゐぶん瓶《びん》を沢山はじけらせました。」
「ふん。」
「砂糖を入れな
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