柳沢
宮沢賢治
−−−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)藻《も》の
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)大丈夫|外《そ》れ弾丸は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「ん」は小書き]
−−
林は夜の空気の底のすさまじい藻《も》の群落だ。みんなだまって急いでゐる。早く通り抜けようとしてゐる。
俄《にはか》に空がはっきり開け星がいっぱい耀《きら》めき出した。たゞその空のところどころ中風にでもかかったらしく変に淀《よど》んで暗いのは幾片か雲が浮んでゐるのにちがひない。
その静かな微光の下から烈《はげ》しく犬が啼《な》き出した。
けれども家の前を通るときは犬は裏手の方へ逃げて微《かす》かにうなってゐるのだ。
一寸《ちょっと》来ない間に社務所の向ひに立派な宿ができた。ラムプが黄いろにとぼってゐる。社務所ではもう戸を閉めた。
(こんや、二時まで泊めて下さい。四人です。たいまつがありますか。わらぢがありますか。それから何かよるのたべものがありますか。ほう、火がよく燃えてるな。そいぢゃ、よござんすか。入り
次へ
全9ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング