外で熊どもが叫びました。
『レールを横の方へ敷いたんだな』誰かが云ひました。
氷ががりがり鳴つたりばたばたかけまはる音がしたりして汽車は動き出しました。
『さあけがをしないやうに降りるんだ』船乗りが云ひました。赤ひげは笑つてちよつと船乗りの手を握つて飛び降りました。
『そら、ピストル』船乗りはピストルを窓の外へはふり出しました。
『あの赤ひげは熊《くま》の方の間諜《かんてふ》だつたね』誰《たれ》かが云ひました。わかものは又窓の氷を削りました。
氷山の稜《かど》が桃色や青やぎらぎら光つて窓の外にぞろつとならんでゐたのです。これが風のとばしてよこしたお話のおしまひの一切れです。
底本:「新修宮沢賢治全集 第十三巻」筑摩書房
1980(昭和55)年3月15日初版第1刷発行
初出:「岩手毎日新聞」
1923(大正12)年4月15日
※「ウヱスキー」と「ウヰスキー」、「眠る」と「睡る」の混在は底本通りにしました。
入力:マイマイマイ
校正:小林繁雄
2005年2月22日作成
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