いそぎひれふせ、ひざまづけ、  みじろがざれ。」と技手云へば、
種子やまくらんいこふらん、    ひとらかすみにうごくともなし。



  〔うからもて台地の雪に〕

うからもて台地の雪に、  部落《シユク》なせるその杜黝し。

曙人《とほつおや》、馮《の》りくる児らを、  穹窿ぞ光りて覆ふ。



  〔残丘《モナドノツク》の雪の上に〕

残丘《モナドノツク》の雪の上に、        二すぢうかぶ雲ありて、
誰かは知らねサラアなる、    女《ひと》のおもひをうつしたる。

信をだになほ装へる、      よりよき生へのこのねがひを、
なにとてきみはさとり得ぬと、  しばしうらみて消えにけり。



  民間薬

たけしき耕の具を帯びて、  羆熊の皮は着たれども、
夜に日をつげる一月の、   干泥のわざに身をわびて、
しばしましろの露置ける、  すぎなの畔にまどろめば、
はじめは額の雲ぬるみ、   鳴きかひめぐるむらひばり、
やがては古き巨人の、    石の匙もて出できたり、
ネプウメリてふ草の葉を、  薬に食めとをしへけり。



  〔吹雪かゞやくなかにして〕

吹雪かゞやくな
前へ 次へ
全17ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング