日の出前


学校は、  稗と粟との野末にて、  朝の黄雲に濯はれてあり。

学校の、  ガラス片《ひら》ごとかゞやきて、  あるはうつろのごとくなりけり。



  岩手山巓


外輪山の夜明け方、    息吹きも白み競ひ立ち、
三十三の石神に、     米《よね》を注ぎて奔り行く。

雲のわだつみ洞なして、  青野うるうる川湧けば、
あなや春日のおん帯と、  もろびと立ちてをろがみぬ。



  車中〔二〕


稜堀山の巌の稜、  一|木《き》を宙に旋るころ
まなじり深き伯楽《はくらく》は、  しんぶんをこそひろげたれ。

地平は雪と藍の松、  氷を着るは七時雨、
ばらのむすめはくつろぎて、  けいとのまりをとりいでぬ。



  化物丁場


すなどりびとのかたちして、  つるはしふるふ山かげの、
化物丁場しみじみと、  水湧きいでて春寒き。

峡のけむりのくらければ、  山はに円く白きもの、
おそらくそれぞ日ならんと、  親方《ボス》もさびしく仰ぎけり。



  開墾地落上


白髪かざして高清は、     ブロージットと云へるなり。

松の岩頸 春の雲、      コ
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