「もう少し行ぐづどみんなして草刈ってるぞ。それから馬のいるどごもあるぞ。」一郎は言いながら先に立って刈った草のなかの一ぽんみちをぐんぐん歩きました。
三郎はその次に立って、
「ここには熊《くま》いないから馬をはなしておいてもいいなあ。」と言って歩きました。
しばらく行くとみちばたの大きな楢《なら》の木の下に、繩で編んだ袋が投げ出してあって、たくさんの草たばがあっちにもこっちにもころがっていました。
せなかに草束をしょった二匹の馬が、一郎を見て鼻をぷるぷる鳴らしました。
「兄《あい》な、いるが。兄《あい》な、来たぞ。」一郎は汗をぬぐいながら叫びました。
「おおい。ああい。そこにいろ。今行ぐぞ。」ずうっと向こうのくぼみで、一郎のにいさんの声がしました。
日はぱっと明るくなり、にいさんがそっちの草の中から笑って出て来ました。
「善《ゆ》ぐ来たな。みんなも連れで来たのが。善《ゆ》ぐ来た。戻りに馬こ連れでてけろな。きょうあ午《ひる》まがらきっと曇る。おらもう少し草集めて仕舞《しむ》がらな、うなだ遊ばばあの土手の中さはいってろ。まだ牧馬の馬二十匹ばかりはいるがらな。」
にいさんは向こう
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