でした、
二番書記は虎猫《とらねこ》でした、
三番書記は三毛猫でした、
四番書記は竃猫《かまねこ》でした。
[#ここで字下げ終わり]
 竃猫といふのは、これは生れ付きではありません。生れ付きは何猫でもいいのですが、夜かまどの中にはひつてねむる癖があるために、いつでもからだが煤《すす》できたなく、殊に鼻と耳にはまつくろにすみがついて、何だか狸《たぬき》のやうな猫のことを云《い》ふのです。
 ですからかま[#「かま」に傍点]猫はほかの猫には嫌はれます。
 けれどもこの事務所では、何せ事務長が黒猫なもんですから、このかま[#「かま」に傍点]猫も、あたり前ならいくら勉強ができても、とても書記なんかになれない筈《はず》のを、四十人の中からえらびだされたのです。
 大きな事務所のまん中に、事務長の黒猫が、まつ赤な羅紗《らしや》をかけた卓《テーブル》を控へてどつかり腰かけ、その右側に一番の白猫と三番の三毛猫、左側に二番の虎猫と四番のかま[#「かま」に傍点]猫が、めいめい小さなテーブルを前にして、きちんと椅子《いす》にかけてゐました。
 ところで猫に、地理だの歴史だの何になるかと云ひますと、
 まあこ
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