畑のへり
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)虻《あぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|疋《ぴき》
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麻が刈られましたので、畑のへりに一列に植ゑられてゐたたうもろこしは、大へん立派に目立ってきました。
小さな虻《あぶ》だのべっ甲いろのすきとほった羽虫だのみんなかはるがはる来て挨拶《あいさつ》して行くのでした。
たうもろこしには、もう頂上にひらひらした穂が立ち、大きな縮れた葉のつけねには尖《とが》った青いさやができてゐました。
そして風にざわざわ鳴りました。
一|疋《ぴき》の蛙《かへる》が刈った畑の向ふまで跳んで来て、いきなり、このたうもろこしの列を見て、びっくりして云《い》ひました。
「おや、へんな動物が立ってゐるぞ。からだは瘠《や》せてひょろひょろだが、ちゃんと列を組んでゐる。ことによるとこれはカマジン国の兵隊だぞ。どれ、よく見てやらう。」
そこで蛙は上等の遠めがねを出して眼《め》にあてました。そして大きくなったたうもろこしのかたちをちらっと見るや蛙はぎゃあと叫んで遠めがねも何もはふり出して一目散に遁《
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