などが生えてゐましたが又所々にはあざみやせいの低いひどくねぢれた楊《やなぎ》などもありました。
水がじめじめしてその表面にはあちこち赤い鉄の渋が湧《わ》きあがり見るからどろどろで気味も悪いのでした。
そのまん中の小さな島のやうになった所に丸太で拵《こしら》へた高さ一間ばかりの土神の祠《ほこら》があったのです。
土神はその島に帰って来て祠の横に長々と寝そべりました。そして黒い瘠《や》せた脚をがりがり掻《か》きました。土神は一羽の鳥が自分の頭の上をまっすぐに翔《か》けて行くのを見ました。すぐ土神は起き直って「しっ」と叫びました。鳥はびっくりしてよろよろっと落ちさうになりそれからまるではねも何もしびれたやうにだんだん低く落ちながら向ふへ遁《に》げて行きました。
土神は少し笑って起きあがりました。けれども又すぐ向ふの樺の木の立ってゐる高みの方を見るとはっと顔色を変へて棒立ちになりました。それからいかにもむしゃくしゃするといふ風にそのぼろぼろの髪毛を両手で掻きむしってゐました。
その時谷地の南の方から一人の木樵《きこり》がやって来ました。三つ森山の方へ稼《かせ》ぎに出るらしく谷地のふち
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