土神と狐
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)樺《かば》の木
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)又一|疋《ぴき》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
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(一)[#「(一)」は縦中横]
一本木の野原の、北のはづれに、少し小高く盛りあがった所がありました。いのころぐさがいっぱいに生え、そのまん中には一本の奇麗な女の樺《かば》の木がありました。
それはそんなに大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白き雲をつけ、秋は黄金《きん》や紅やいろいろの葉を降らせました。
ですから渡り鳥のくゎくこうや百舌《もず》も、又小さなみそさゞいや目白もみんなこの木に停《と》まりました。たゞもしも若い鷹《たか》などが来てゐるときは小さな鳥は遠くからそれを見付けて決して近くへ寄りませんでした。
この木に二人の友達がありました。一人は丁度、五百歩ばかり離れたぐちゃぐちゃの谷地《やち》の中に住んでゐる土神で一人はいつも野原の南の方か
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