土神ときつね
宮沢賢治

−−−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)盛《も》りあがった

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その時|吹《ふ》いて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
−−

   (一)[#「(一)」は縦中横]

 一本木の野原の、北のはずれに、少し小高く盛《も》りあがった所がありました。いのころぐさがいっぱいに生え、そのまん中には一本の奇麗《きれい》な女の樺《かば》の木がありました。
 それはそんなに大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝《えだ》は美しく伸《の》びて、五月には白い花を雲のようにつけ、秋は黄金《きん》や紅《あか》やいろいろの葉を降らせました。
 ですから渡《わた》り鳥のかっこうや百舌《もず》も、又《また》小さなみそさざいや目白もみんなこの木に停《と》まりました。ただもしも若い鷹《たか》などが来ているときは小さな鳥は遠くからそれを見付けて決して近くへ寄りませんでした。
 この木に二人の友達がありました。一人は丁度、五百歩ばかり離《はな》れたぐちゃぐ
次へ
全22ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング