び込んで行きました。中はがらんとして暗くただ赤土が奇麗《きれい》に堅《かた》められているばかりでした。土神は大きく口をまげてあけながら少し変な気がして外へ出て来ました。
 それからぐったり横になっている狐の屍骸《しがい》のレーンコートのかくしの中に手を入れて見ました。そのかくしの中には茶いろなかもがやの穂が二本はいって居ました。土神はさっきからあいていた口をそのまままるで途方《とほう》もない声で泣き出しました。
 その泪《なみだ》は雨のように狐に降り狐はいよいよ首をぐんにゃりとしてうすら笑ったようになって死んで居たのです。



底本:「注文の多い料理店」新潮文庫、新潮社
   1990(平成2)年5月25日発行
   1995(平成7)年5月30日11刷
入力:蒋龍
校正:noriko saito
2008年11月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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