萱《かや》をわけてあるきました。そして私はすぐ初蕈《はつたけ》の三つならんでる所を見附けました。
「ありました。」叫んだのです。
「さうか。」役人たちは来てのぞきました。
「何だ、ただ三つぢゃないか。長官は六人もご家族をつれていらっしゃるんだ。三つぢゃ仕方ない、お一人十づつとしても六十無くちゃだめだ。」
「六十ぐらゐ大丈夫あります。」慶次郎が向ふで袖《そで》で汗を拭《ふ》きながら云ひました。
「いや、あちこちちらばったんぢゃさがし出せない。二とこぐらゐに集まってなくちゃ。」
「初蕈はそんなに集まってないんです。」私も勢《いきほひ》がついて言ひました。
「ふうん、そんならかまはないからおまへたちのとった蕈をそこらへ立てて置かうかな。」
「それでいゝさ。」黒服の方が薄いひげをひねりながら答へました。
「おい、お前たちの籠《かご》の蕈をみんなよこせ。あとでごほうびはやるからな。」紺服は笑って云ひました。私たちはだまって籠を出したのです。二人はしゃがんで籠を倒《さかさま》にして数を数へてから小さいのはみんな又籠に戻しました。
「丁度いゝよ、七十ある。こいつをこゝらへ立ててかう。」
 紺服の人は
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