え。我今|疾翔大力《しっしょうたいりき》が威神力《いじんりき》を享《う》けて梟鵄救護章の一節を講ぜんとす。唯《ただ》願うらくはかの如来《にょらい》大慈《だいじ》大悲《だいひ》我が小願の中に於《おい》て大神力を現じ給い妄言《もうげん》綺語《きご》の淤泥《おでい》を化《け》して光明|顕色《けんじき》の浄瑠璃《じょうるり》となし、浮華《ふか》の中より清浄《しょうじょう》の青蓮華《しょうれんげ》を開かしめ給わんことを。至心欲願、南無仏《なむぶつ》南無仏南無仏。
 爾《そ》の時に疾翔大力、爾迦夷《るかい》に告げて曰《いわ》く、諦《あきらか》に聴け諦に聴け。善《よ》くこれを思念せよ。我今|汝《なんじ》に梟鵄諸の悪禽《あくきん》離苦《りく》解脱《げだつ》の道を述べんと。
 爾迦夷|則《すなわ》ち両翼《りょうよく》を開張し、虔《うやうや》しく頸《くび》を垂れて座を離《はな》れ、低く飛揚《ひよう》して疾翔大力を讃嘆《さんたん》すること三匝《さんそう》にして、徐《おもむろ》に座に復し、拝跪《はいき》して願うらく疾翔大力、疾翔大力、ただ我|等《ら》が為《ため》にこれを説き給え。ただ我等が為にこれを説き給えと
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