と黄いろな尖《とが》った変なかたちのものがあらはれました。梟《ふくろふ》どもは俄にざわっとしました。二十四日の黄金《きん》の角《つの》、鎌《かま》の形の月だったのです。忽《たちま》ちすうっと昇ってしまひました。沼の底の光のやうな朧《おぼろ》な青いあかりがぼおっと林の高い梢《こずゑ》にそゝぎ一|疋《ぴき》の大きな梟《ふくろふ》が翅《はね》をひるがへしてゐるのもひらひら銀いろに見えました。さっきの説教の松の木のまはりになった六本にはどれにも四|疋《ひき》から八疋ぐらゐまで梟がとまってゐました。低く出た三本のならんだ枝に三疋の子供の梟がとまってゐました。きっと兄弟だったでせうがどれも銀いろで大さ[#「大さ」はママ]はみな同じでした。その中でこちらの二疋は大分|厭《あ》きてゐるやうでした。片っ方の翅をひらいたり、片脚でぶるぶる立ったり、枝へ爪《つめ》を引っかけてくるっと逆さになって小笠原島のかうもりのまねをしたりしてゐました。
 それから何か云《い》ってゐました。
「そら、大の字やって見せようか。大の字なんか何でもないよ。」
「大の字なんか、僕《ぼく》だってできらあ。」
「できるかい。できるな
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