|懺悔《ざんげ》の念あることなし。
 悪業《あくごふ》を以ての故に、更に又諸の悪業を作る。継起して遂《つひ》に竟《をは》ることなし。昼は則ち日光を懼《おそ》れ又人|及《および》諸の強鳥を恐る。心|暫《しば》らくも安らかなることなし。一度|梟身《けうしん》を尽して、又|新《あらた》に梟身を得。審《つまびらか》に諸の患難を被《かうむ》りて、又尽くることなし。
 で前の晩は、斯《かく》の如《ごと》きの諸の悪業、挙げて数ふることなし、まで講じたが、今夜はその次ぢゃ。
 悪業を以ての故に、更に又諸の悪業を作ると、これは誠に短いながら、強いお語《ことば》ぢゃ。先刻人間に恨みを返すとの議があった節、申した如くぢゃ、一の悪業によって一の悪果を見る。その悪果故に、又新なる悪業を作る。斯の如く展転して、遂《つひ》にやむときないぢゃ。車輪のめぐれどもめぐれども終らざるが如くぢゃ。これを輪廻《りんね》といひ、流転《るてん》といふ。悪より悪へとめぐることぢゃ。継起して遂《つひ》に竟《をは》ることなしと云ふがそれぢゃ。いつまでたっても終りにならぬ、どこどこまでも悪因悪果、悪果によって新に悪因をつくる。な。斯《か》
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