ガス》が病因です。うむ。」
「あいた、いた、いた、いた。た。」
「ずいぶんひどい医者だ。漢方の藪医《やぶい》だな。とうとうみんな風化かな。」
大学士は又新らしく
たばこをくわえてにやにやする。
耳の下では鉱物どもが
声をそろえて叫んでいた。
「あ、いた、いた、いた、いた、た、たた。」
みんなの声はだんだん低く
とうとうしんとしてしまう。
「はてな、みんな死んだのか。あるいは僕だけ聞えなくなったのか。」
大学士はみかげのかけらを
手にとりあげてつくづく見て
パチッと向うの隅《すみ》へ弾《はじ》く。
それから榾《ほだ》を一本くべた。
その時はもうあけ方で
大学士は背嚢《はいのう》から
巻煙草《まきたばこ》を二包み出して
榾のお礼に藁《わら》に置き
背嚢をしょい小屋を出た。
石切場の壁《かべ》はすっかり白く
その西側の面だけに
月のあかりがうつっていた。
野宿第三夜
(どうも少し引き受けようが軽率《けいそつ》だったな。グリーンランドの成金《なりきん》がびっくりする程《ほど》立派な蛋白石《たんぱくせき》などを、二週間でさがしてやろうなんてのは、実際少し軽率だった。
どうも斯《こ》う
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