くうそをつくこととひとの恩を仇《あだ》でかえすのとはどっちも悪いことですね。」
「何だと、僕のことを云ってるのかい。よしさあ、僕も覚悟《かくご》があるぞ。決闘《けっとう》をしろ、決闘を。」
「まあ、お待ちなさい。ね、あのお日さまを見たときのうれしかったこと。どんなに僕らは叫《さけ》んだでしょう。千五百万年光というものを知らなかったんだもの。あの時鋼《はがね》の槌《つち》がギギンギギンと僕らの頭にひびいて来ましたね。遠くの方で誰《たれ》かが、ああお前たちもとうとうお日さまの下へ出るよと叫んでいた、もう僕たちの誰と誰とが一緒になって誰と誰とがわかれなければならないか。一向|判《わか》らなかったんですね。さよならさよならってみんな叫びましたねえ。そしたら急にパッと明るくなって僕たちは空へ飛びあがりましたねえ。あの時僕はお日さまの外に何か赤い光るものを見たように思うんですよ。」
「それは僕も見たよ。」
「僕も見たんだよ、何だったろうね、あれは。」
大学士は又笑う。
「それはね、明らかにたがねのさきから出た火花だよ。パチッて云ったろう。そして熱かったろう。」
ところが学士の声などは
鉱物どもに聞
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