草《さくらそう》があるよ、それをお前にやろう。」
「ありがとう、兄さん。」
「やかましい、何をふざけたことを云ってるんだ。」
暴《あら》っぽいラクシャンの第一子が
金粉の怒鳴り声を
夜の空高く吹きあげた。
「ヒームカってなんだ。ヒームカって。
ヒームカって云うのは、あの向うの女の子の山だろう。よわむしめ。あんなものとつきあうのはよせと何べんもおれが云ったじゃないか。ぜんたいおれたちは火から生れたんだぞ青ざめた水の中で生れたやつらとちがうんだぞ。」
ラクシャンの第|四子《しし》は
しょげて首を垂れたが
しずかな直《じ》かの兄が
弟のために長兄をなだめた。
「兄さん。ヒームカさんは血統はいいのですよ。火から生れたのですよ。立派なカンランガンですよ。」
ラクシャンの第一子は
尚更《なおさら》怒って
立派な金粉のどなりを
まるで火のようにあげた。
「知ってるよ。ヒームカはカンランガンさ。火から生れたさ。それはいいよ。けれどもそんなら、一体いつ、おれたちのようにめざましい噴火をやったんだ。あいつは地面まで騰《のぼ》って来る途中《とちゅう》で、もう疲《つか》れてやめてしまったんだ。今こそ地殻《ちか
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