かくし》から
鼠《ねずみ》いろの皺《しわ》くちゃになった状袋を
出していきなり投げつけた。
「先生困ります。あんまりです。」
貝の火|兄弟《けいてい》商会の
赤鼻の支配人は云ひながら
すばやく旅費の袋をさらひ
上着の内衣嚢《うちポケット》に投げ込んだ。
「帰れ、帰れ、もう来るな。」
「先生、困ります。あんまりです。」
たうとう貝の火兄弟商会の
赤鼻の支配人は帰って行き
大学士は葉巻を横にくはへ
雲母紙《うんもし》を張った天井を
斜めに見ながらにやっと笑ふ。
底本:「新修宮沢賢治全集 第十巻」筑摩書房
1979(昭和54)年9月15日初版第1刷発行
1983(昭和58)年4月20日初版第5刷発行
入力:林 幸雄
校正:今井忠夫
2003年4月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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