「あゝ、プラヂョさん。どんな手あてをいたしたらよろしうございませうか。」
「さあ、さう云ふ工合《ぐあひ》に泣いてゐるのは一番よろしくありません。からだをねぢってあちこちのへきかいよび面にすきまをつくるのはなほさら、よろしくありません。その他風にあたれば病気のしゃうけつを来します。日にあたれば病勢がつのります。霜にあたれば病勢が進みます。露にあたれば病状がかう進します。雪にあたれば症状が悪変します。じっとしてゐるのはなほさらよろしくありません。それよりは、その、精神的に眼をつむって観念するのがいゝでせう、わがこの恐れるところの死なるものは、そもそも何であるか、その本質はいかん、生死|巌頭《がんとう》に立って、をかしいぞ、はてな、をかしい、はて、これはいかん、あいた、いた、いた、いた、いた、」
「プラヂョさん、プラヂョさん、しつかりなさい。一体どうなすったのです。」
「うむ、私も、うむ、風病のうち、うむ、うむ。」
「苦しいでせう、これはほんたうにお気の毒なことになりました。」
「うむ、うむ、いゝえ、苦しくありません。うむ。」
「何かお手あていたしませう。」
「うむ、うむ、実はわたくしも地面
前へ 次へ
全40ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング