があるね、そいつの中の鉱物がかやかや物を云ってるんだね。」
なるほど大学士の頭の下に
支那《しな》の六銭銀貨のくらゐの
みかげのかけらが落ちてゐた。
学士はいよいよにこにこする。
「さうかい。そんならいゝよ。お前のやうな恩知らずは早く粘土になっちまへ。」
「おや、呪《のろ》ひをかけたね。僕も引っ込んぢゃゐないよ。さあ、お前のやうな、」
「一寸《ちょっと》お待ちなさい。あなた方は一体何をさっきから喧嘩《けんくゎ》してるんですか。」
新らしい二人の声が
一緒にはっきり聞え出す。
「オーソクレさん。かまはないで下さい。あんまりこいつがわからないもんですからね。」
「双子さん。どうかかまはないで下さい。あんまりこいつが恩知らずなもんですからね。」
「ははあ、双晶のオーソクレースが仲裁に入った。これは実におもしろい。」
大学士はたきびに手をあぶり
顔中口にしてよろこんで云ふ。
二つの声が又聞える。
「まあ、静かになさい。僕たちは実に実に長い間堅く堅く結び合ってあのまっくらなまっくらなとこで一緒にまはりからのはげしい圧迫やすてきな強い熱にこらへて来たではありませんか。一時はあまりの熱と力にみんな一
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