もう立ちあがりました。かたつむりも仕方なく、
「私《わたし》はどうも弱いのですから強く投げないで下さい。」と云ひながら立ちあがりました。
「よっしょ。そら。ハッハハ。」かたつむりはひどく投げつけられました。
「もう一ぺんやりませう。ハッハハ」
「もうつかれてだめです。」
「まあもう一ぺんやりませうよ。ハッハハ。よっしょ。そら。ハッハハ。」かたつむりはひどく投げつけられました。
「もう一ぺんやりませう。ハッハハ。」
「もうだめです。」
「まあもう一ぺんやりませうよ。ハッハハ。よっしょ、そら。ハッハハ。」かたつむりはひどく投げつけられました。
「もう一ぺんやりませう。ハッハハ。」
「もうだめ。」
「まあもう一ぺんやりませうよ。ハッハハ。よっしょ。そら。ハッハハ。」かたつむりはひどく投げつけられました。
「もう一ぺんやりませう。ハッハハ。」
「もう死にます。さよなら。」
「まあもう一ぺんやりませうよ。ハッハハ。さあ。お立ちなさい。起こしてあげませう。よっしょ。そら。ヘッヘッヘ。」かたつむりは死んでしまひました。そこで銀色のなめくぢはかたつむりを殻ごとみしみし喰べてしまひました。
 それから一
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