ヶ月ばかりたって、とかげがなめくぢの立派なおうちへびっこをひいて来ました。そして
「なめくぢさん。今日は。お薬をすこし呉れませんか。」と云ひました。
「どうしたのです。」となめくぢは笑って聞きました。
「へびに噛《か》まれたのです。」ととかげが云ひました。
「そんならわけはありません。私《わたし》が一寸《ちょっと》そこを嘗《な》めてあげませう。わたしが嘗めれば蛇《へび》の毒はすぐ消えます。なにせ蛇さへ溶けるくらゐですからな。ハッハハ。」となめくぢは笑って云ひました。
「どうかお願ひ申します」ととかげは足を出しました。
「えゝ。よござんすとも。私《わたくし》とあなたとは云はば兄弟。あなたと蛇も兄弟ですね。ハッハハ。」となめくぢは云ひました。
 そしてなめくぢはとかげの傷に口をあてました。
「ありがたう。なめくぢさん。」ととかげは云ひました。
「も少しよく嘗めないとあとで大変ですよ。今度又来てももう直してあげませんよ。ハッハハ。」となめくぢはもがもが返事をしながらやはりとかげを嘗めつゞけました。
「なめくぢさん。何だか足が溶けたやうですよ。」ととかげはおどろいて云ひました。
「ハッハハ。な
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