あに。それほどぢゃありません。ハッハハ。」となめくぢはやはりもがもが答へました。
「なめくぢさん。おなかが何だか熱くなりましたよ。」ととかげは心配して云ひました。
「ハッハハ。なあにそれほどぢゃありません。ハッハハ。」となめくぢはやはりもがもが答へました。
「なめくぢさん。からだが半分とけたやうですよ。もうよして下さい。」ととかげは泣き声を出しました。
「ハッハハ。なあにそれほどぢゃありません。ほんのも少しです。ハッハハ。」となめくぢが云ひました。
 それを聞いたとき、とかげはやっと安心しました。安心したわけはそのとき丁度心臓がとけたのです。
 そこでなめくぢはペロリととかげをたべました。そして途方もなく大きくなりました。
 あんまり大きくなったので嬉《うれ》しまぎれについあの蜘蛛《くも》をからかったのでした。
 そしてかへって蜘蛛からあざけられて、熱病を起して、毎日毎日、ようし、おれも大きくなるくらゐ大きくなったらこんどはきっと虫けら院の名誉議員になってくもが何か云ったときふうと息だけついて返事してやらうと云ってゐた。ところがこのころからなめくぢの評判はどうもよくなくなりました。
 
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