ひましたよ。まだわたしの食べるものはなし、水はなし、すこしばかりお前さんのうちにためてあるふきのつゆを呉《く》れませんか。」と云ひました。
 するとなめくぢが云ひました。
「あげますともあげますとも、さあ、おあがりなさい。」
「あゝありがたうございます。助かります。」と云ひながらかたつむりはふきのつゆをどくどくのみました。
「もっとおあがりなさい。あなたと私《わたくし》とは云はば兄弟。ハッハハ。さあ、さあ、も少しおあがりなさい。」となめくぢが云ひました。
「そんならも少しいたゞきます。あゝありがたうございます。」と云ひながらかたつむりはも少しのみました。
「かたつむりさん。気分がよくなったら一つひさしぶりで相撲《すまふ》をとりませうか。ハッハハ。久しぶりです。」となめくぢが云ひました。
「おなかがすいて力がありません。」とかたつむりが云ひました。
「そんならたべ物をあげませう。さあ、おあがりなさい。」となめくぢはあざみの芽やなんか出しました。
「ありがたうございます。それではいたゞきます。」といひながらかたつむりはそれを喰べました。
「さあ、すまふをとりませう。ハッハハ。」となめくぢが
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