、やられた。塩だ。畜生。」となめくぢが云ひました。
蛙はそれを聞くと、むっくり起きあがってあぐらをかいて、かばんのやうな大きな口を一ぱいにあけて笑ひました。そしてなめくぢにおじぎをして云ひました。
「いや、さよなら。なめくぢさん。とんだことになりましたね。」
なめくぢが泣きさうになって、
「蛙《かへる》さん。さよ……。」と云ったときもう舌がとけました。雨蛙はひどく笑ひながら
「さよならと云ひたかったのでせう。本当にさよならさよなら。わたしもうちへ帰ってからたくさん泣いてあげますから。」と云ひながら一目散に帰って行った。
さうさうこのときは丁度秋に蒔《ま》いた蕎麦《そば》の花がいちめん白く咲き出したときであの眼の碧《あを》いすがるの群はその四っ角な畑いっぱいうすあかい幹の間をくぐったり花のついたちひさな枝をぶらんこのやうにゆすぶったりしながら今年の終りの蜜《みつ》をせっせと集めて居りました。
三、顔を洗はない狸。
狸《たぬき》はわざと顔を洗はなかったのだ。丁度|蜘蛛《くも》が林の入口の楢《なら》の木に、二銭銅貨位の巣をかけた時、じぶんのうちのお寺へ帰ってゐたけれど
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