人は夫婦になりました。網には毎日|沢山《たくさん》食べるものがかかりましたのでおかみさんの蜘蛛は、それを沢山たべてみんな子供にしてしまいました。そこで子供が沢山生まれました。ところがその子供らはあんまり小さくてまるですきとおる位です。
 子供らは網の上ですべったり、相撲《すもう》をとったり、ぶらんこをやったり、それはそれはにぎやかです。おまけにある日とんぼが来て今度蜘蛛を虫けら会の相談役にするというみんなの決議をつたえました。
 ある日夫婦のくもは、葉のかげにかくれてお茶をのんでいますと、下の方でへらへらした声で歌うものがあります。
「あぁかい手ながのくぅも、
 できたむすこは二百|疋《ぴき》、
 めくそ、はんかけ、蚊のなみだ、
 大きいところで稗《ひえ》のつぶ。」
 見るとそれは大きな銀色のなめくじでした。
 蜘蛛のおかみさんはくやしがって、まるで火がついたように泣きました。
 けれども手長の蜘蛛は云いました。
「ふん。あいつはちかごろ、おれをねたんでるんだ。やい、なめくじ。おれは今度は虫けら会の相談役になるんだぞ。へっ。くやしいか。へっ。てまえなんかいくらからだばかりふとっても、こ
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