敗して雨で流れてしまいましたので、なめくじも少しせいせいしました。
次の年ある日|雨蛙《あまがえる》がなめくじの立派なおうちへやって参りました。
そして、
「なめくじさん。こんにちは。少し水を呑《の》ませませんか。」と云いました。
なめくじはこの雨蛙もペロリとやりたかったので、思い切っていい声で申しました。
「蛙さん。これはいらっしゃい。水なんかいくらでもあげますよ。ちかごろはひでりですけれどもなあに云わばあなたと私《わたくし》は兄弟。ハッハハ。」そして水がめの所へ連れて行《ゆ》きました。
蛙はどくどくどくどく水を呑んでからとぼけたような顔をしてしばらくなめくじを見てから云いました。
「なめくじさん。ひとつすもうをとりましょうか。」
なめくじはうまいと、よろこびました。自分が云おうと思っていたのを蛙の方が云ったのです。こんな弱ったやつならば五へん投げつければ大ていペロリとやれる。
「とりましょう。よっしょ。そら。ハッハハ。」かえるはひどく投げつけられました。
「もう一ぺんやりましょう。ハッハハ。よっしょ。そら。ハッハハ。」かえるは又投げつけられました。するとかえるは大へんあわ
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