た。
「なめくじさん。からだが半分とけたようですよ。もうよして下さい。」ととかげは泣き声を出しました。
「ハッハハ。なあにそれほどじゃありません。ほんのも少しです。も一分五|厘《りん》ですよ。ハッハハ。」となめくじが云いました。
 それを聞いたとき、とかげはやっと安心しました。丁度心臓がとけたのです。
 そこでなめくじはペロリととかげをたべました。そして途方《とほう》もなく大きくなりました。
 あんまり大きくなったので嬉《うれ》しまぎれについあの蜘蛛《くも》をからかったのでした。
 そしてかえって蜘蛛からあざけられて、熱病を起したのです。そればかりではなく、なめくじの評判はどうもよくなくなりました。
 なめくじはいつでもハッハハと笑って、そしてヘラヘラした声で物を言うけれども、どうも心がよくなくて蜘蛛やなんかよりは却《かえ》って悪いやつだというのでみんなが軽べつをはじめました。殊《こと》に狸はなめくじの話が出るといつでもヘンと笑って云いました。
「なめくじなんてまずいもんさ。ぶま加減は見られたもんじゃない。」
 なめくじはこれを聞いて怒《おこ》って又病気になりました。そのうちに蜘蛛は腐
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