く光りました。曲った黒い幹の間を私どもはだんだん潜《くぐ》って行きました。林の中に入ったら理助もあんまり急がないやうになりました。又じっさい急げないやうでした。傾斜もよほど出てきたのでした。
十五分も柏の中を潜ったとき理助は少し横の方へまがってからだをかゞめてそこらをしらべてゐましたが間もなく立ちどまりました。そしてまるで低い声で、
「さあ来たぞ。すきな位とれ。左の方へは行くなよ。崖だから。」
そこは柏や楢の林の中の小さな空地でした。私はまるでぞくぞくしました。はぎぼだしがそこにもこゝにも盛りになって生えてゐるのです。理助は炭俵をおろして尤《もっとも》らしく口をふくらせてふうと息をついてから又言ひました。
「いゝか。はぎぼだしには茶いろのと白いのとあるけれど白いのは硬くて筋が多くてだめだよ。茶いろのをとれ。」
「もうとってもいゝか。」私はききました。
「うん。何へ入れてく。さうだ。羽織へ包んで行け。」
「うん。」私は羽織をぬいで草に敷きました。
理助はもう片っぱしからとって炭俵の中へ入れました。私もとりました。ところが理助のとるのはみんな白いのです。白いのばかりえらんでどしどし炭
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