でしょう。お気の毒でした。
もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん
よくもみ込んでください。」
[#ここで字下げ終わり]
なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが、こんどというこんどは二人ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん塗った顔を見合せました。
「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
「沢山《たくさん》の注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家《うち》とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。
「遁《に》げ……。」がたがたしながら一人の紳士はうしろの戸を押《お》そうとしましたが、どうです、戸はもう一分《いちぶ》も動きませんでした。
奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホ
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