いっしょ》に云いました。
「うん。いい。そんなら行こう。」
そこで彗星がいやに真面目《まじめ》くさって云いました。
「それじゃ早く俺のしっぽにつかまれ。しっかりとつかまるんだ。さ。いいか。」
二人は彗星のしっぽにしっかりつかまりました。彗星は青白い光を一つフウとはいて云いました。
「さあ、発《た》つぞ。ギイギイギイフウ。ギイギイフウ。」
実に彗星は空のくじらです。弱い星はあちこち逃《に》げまわりました。もう大分来たのです。二人のお宮もはるかに遠く遠くなってしまい今は小さな青白い点にしか見えません。
チュンセ童子が申しました。
「もう余程《よほど》来たな。天の川の落ち口はまだだろうか。」
すると彗星の態度がガラリと変ってしまいました。
「へん。天の川の落ち口よりお前らの落ち口を見ろ。それ一《ひ》ぃ二《ふ》の三《み》。」
彗星は尾を強く二三|遍《べん》動かしおまけにうしろをふり向いて青白い霧を烈《はげ》しくかけて二人を吹き落してしまいました。
二人は青ぐろい虚空《こくう》をまっしぐらに落ちました。
彗星は、
「あっはっは、あっはっは。さっきの誓いも何もかもみんな取り消しだ。
前へ
次へ
全26ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング