ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
爾薩待「はい。」(農民二 登場)
農民二「植物医者づのぁお前さんだべすか。」
爾薩待「ええ、そうです。」
農民二「陸稲《おかぼ》のごとでもわがるべすか。」
爾薩待「ああわかります。私は植物一切の医者ですから。」
農民二「はあ、おりゃの陸稲ぁ、さっぱりおがらなぃです。この位になってだんだん枯れはじめです。」
爾薩待「ああ、そうですか。まあお掛けなさい。ええと、陸稲が枯れるんですか。」
農民二「はあ、斯《こ》う言うにならんす。」(出す)
爾薩待「ああ、なるほど、これはね、こいつはね、あんまり乾き過ぎたという訳でもない、また水はけの悪いためでもない。」
農民二「はあ、全ぐその通りだんす。」
爾薩待「そうでしょう。またあんまり厚く蒔き過ぎたというのでもない。まあ一反歩四升位|蒔《ま》いたでしょう。」
農民二「そうでごあんす、そうでごあんす、丁度それ位蒔ぎあんすた。」
爾薩待「そうでしょう。また肥料があんまり少ないのでもない。また硫安を追肥《ついひ》するのに濃過《こす》ぎたのでもない。まあ肥桶《こえおけ》一つにこれ位入れたでしょ
前へ
次へ
全17ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング