風)これ位でいいな。」(瓶のまま渡す)
農民一「あの虫のいなぃどごさも掛げるのすか。」
爾薩待(あわてる)「いや、それは、いたとこへだけかけるのです。」
農民一「枯れだどごぁ半分ごりゃだんす。」
爾薩待「ああ、丁度その位へかけるだけです。」
農民一「水さなんぼごりゃ入れるのす。」
爾薩待「肥桶一つへまずこれ位ですなあ。」
農民一「はあ、そうせば、よっぽど叮ねいに掛げなぃやなぃな。まんつお有難うごあんすな。すぐ行って掛げで見ら※[#小書き平仮名ん、232−7]す。なんぼ上げだらいがべす。」
爾薩待「そうですな。診察料一円に薬価一円と、二円いただきます。」
農民一「はあ。」(財布から二円出す)
爾薩待(受取る)「やあ、ありがとう。」
農民一「どうもお有難うごあんした。これがらもどうがよろしぐお願いいだしあんす。」
爾薩待「いや、さよなら。」(農民一 退場)
爾薩待(ほくほくして室の中を往来する)「ふん。亜砒酸は五十銭で一円五十銭もうけだ。これなら一向訳ないな。向こうから聞いた上でこっちは解決をつけてやる丈だから。」(硫安を入れるときの手付をする)
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「もうし。」
[#
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