だたんとも、ずいぶんゆぐ穫《と》れだます、まんつ、おらあだりでば大谷地中《おおやぢうぢ》でおれのこれぁとったもの無ぃがったます。」
爾薩待「ははあ、あんまり厚く蒔《ま》きすぎたな。」
農民一「厚ぐ蒔ぐて全体陸稲づもな、一反歩《いったんぶ》さなんぼごりゃ蒔げばいのす。」
爾薩待「さうですな。品種や土壌《どじょう》によりますがなあ、さうですなあ、陸稲一反歩となるというと、可成いろいろですがなあ、その塩水撰したやつとしないやつでもちがいますがなあ。」
農民一「はあ、その塩水撰したのです。」
爾薩待「ははあ、塩水撰した陸稲の種子《たね》と、土壌や肥料にもよりますがなあ。」
農民一「まんつ、あだり前のどごで、あだり前の肥料してす。」
爾薩待「そうですなあ、それは、ええと、あなたのあたりではなんぼぐらい播《ま》きます?」
農民一「まず一反歩四升だなす。おらもその位に播いだんす。」
爾薩待「ははあ、一反歩四升と。少し厚いようですなあ、三升八合ぐらいでしょうな。然し、あなたのとこのは厚蒔のためでもないですなあ。そうすると、やっぱり肥料ですな。肥料があんまり少かったのでしょう。」
農民一「はあ、まぁんつ
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