ちがいなく。困っちまうなあ。」
爾薩待「大丈夫さ。君を困らしぁしないよ。ありがとう、じゃ、さよなら。」
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ペンキ屋徒弟退場。
[#ここから3字下げ]
「申し。」
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
爾薩待(居座《いずま》いを直し身繕《みづくろ》いする)「はあ。」
農民一(登場 枯れた陸稲《おかぼ》をもっている)「稲の伯楽《ばくろう》づのぁ、こっちだべすか。」
爾薩待「はあ、そうです。」
農民一「陸稲のごとでもわがるべすか。」
爾薩待「ああ、わかります。私は植物一切の医者ですから。」
農民一「はあ、おりゃの陸稲ぁ、さっぱりおがらなぃです。この位になって、だんだん枯れはじめです、なじょにしたらいが、教えてくな※[#小書き平仮名ん、228−12]せ。」(出す)
爾薩待(手にとって見る)「ははあ、あんまり乾き過ぎたな。」
農民一「いいえ、おりゃのあそごぁひでえ谷地《やじ》で、なんぼ旱《ひでり》でも土ぽさぽさづぐなるづごとのなぃどごだます。」
爾薩待「ははあ、あんまり水のはけないためだ。」
農民一(考える)「すた、去年なも、ずいぶん雨降り
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