泉ある家
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)今日《きょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|間《けん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#小書き平仮名こ、128−12]
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 これが今日《きょう》のおしまいだろう、と云《い》いながら斉田《さいた》は青じろい薄明《はくめい》の流《なが》れはじめた県道に立って崖《がけ》に露出《ろしゅつ》した石英斑岩《せきえいはんがん》から一かけの標本《ひょうほん》をとって新聞紙に包んだ。
 富沢《とみざわ》は地図のその点に橙《だいだい》を塗《ぬ》って番号《ばんごう》を書きながら読んだ。斉田はそれを包みの上に書きつけて背嚢《はいのう》に入れた。
 二人は早く重《おも》い岩石の袋《ふくろ》をおろしたさにあとはだまって県道を北へ下った。
 道の左には地図にある通りの細い沖積地《ちゅうせきち》が青金《あおがね》の鉱山《こうざん》を通って来る川に沿《そ》って青くけむった稲《いね》を載《の》
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