「凍《し》み雪しんこ、堅雪かんこ、
   野原のまんじゅうはポッポッポ。
 酔ってひょろひょろ太右衛門が、
   去年、三十八、たべた。
 凍み雪しんこ、堅雪かんこ、
   野原のおそばはホッホッホ。
 酔ってひょろひょろ清作が、
   去年十三ばいたべた。」
[#ここで字下げ終わり]
 四郎もかん子もすっかり釣《つ》り込《こ》まれてもう狐と一緒《いっしょ》に踊《おど》っています。
 キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キック、トントントン。
 四郎が歌いました。
「狐こんこん狐の子、去年狐のこん兵衛が、ひだりの足をわなに入れ、こんこんばたばたこんこんこん。」
 かん子が歌いました。
「狐こんこん狐の子、去年狐のこん助が、焼いた魚を取ろとしておしりに火がつききゃんきゃんきゃん。」
 キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キックトントントン。
 そして三人は踊りながらだんだん林の中にはいって行きました。赤い封蝋《ふうろう》細工のほおの木の芽が、風に吹《ふ》かれてピッカリピッカリと光り、林の中の雪には藍色《あいい
前へ 次へ
全16ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング