四つで十二歳。」と四郎が云いました。
 すると紺三郎は尤《もっと》もらしく又おひげを一つひねって云いました。
「それでは残念ですが兄さんたちはお断わりです。あなた方だけいらっしゃい。特別席をとって置きますから、面白いんですよ。幻燈は第一が『お酒をのむべからず。』これはあなたの村の太右衛門《たえもん》さんと、清作さんがお酒をのんでとうとう目がくらんで野原にあるへんてこなおまんじゅうや、おそばを喰《た》べようとした所です。私も写真の中にうつっています。第二が『わなに注意せよ。』これは私共のこん兵衛《べえ》が野原でわなにかかったのを画《か》いたのです。絵です。写真ではありません。第三が『火を軽べつすべからず。』これは私共のこん助があなたのお家《うち》へ行って尻尾《しっぽ》を焼いた景色です。ぜひおいで下さい。」
 二人は悦《よろこ》んでうなずきました。
 狐《きつね》は可笑《おか》しそうに口を曲げて、キックキックトントンキックキックトントンと足ぶみをはじめてしっぽと頭を振ってしばらく考えていましたがやっと思いついたらしく、両手を振って調子をとりながら歌いはじめました。
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