こから1字下げ]
キックキックトントン、キックキック、トントン、
 凍み雪しんこ、堅雪かんこ、
     野原のおそばはぽっぽっぽ、
 酔ってひょろひょろ清作が
     去年十三ばい喰べた。
キック、キック、キック、キック、トン、トン、トン。
[#ここで字下げ終わり]
 写真が消えて一寸《ちょっと》やすみになりました。
 可愛《かあい》らしい狐の女の子が黍団子《きびだんご》をのせたお皿を二つ持って来ました。
 四郎はすっかり弱ってしまいました。なぜってたった今太右衛門と清作との悪いものを知らないで喰べたのを見ているのですから。
 それに狐の学校生徒がみんなこっちを向いて「食うだろうか。ね。食うだろうか。」なんてひそひそ話し合っているのです。かん子ははずかしくてお皿を手に持ったまままっ赤になってしまいました。すると四郎が決心して云いました。
「ね、喰べよう。お喰べよ。僕《ぼく》は紺三郎さんが僕らを欺《だま》すなんて思わないよ。」そして二人は黍団子をみんな喰べました。そのおいしいことは頬《ほ》っぺたも落ちそうです。狐の学校生徒はもうあんまり悦んでみんな踊りあがってしまいました。
[#ここ
前へ 次へ
全16ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング