はなりません。開会の辞です。」
みんな悦んでパチパチ手を叩きました。そして四郎がかん子にそっと云いました。
「紺三郎さんはうまいんだね。」
笛がピーと鳴りました。
『お酒をのむべからず』大きな字が幕にうつりました。そしてそれが消えて写真がうつりました。一人のお酒に酔《よ》った人間のおじいさんが何かおかしな円いものをつかんでいる景色です。
みんなは足ぶみをして歌いました。
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キックキックトントンキックキックトントン
凍み雪しんこ、堅雪かんこ、
野原のまんじゅうはぽっぽっぽ
酔ってひょろひょろ太右衛門《たえもん》が
去年、三十八たべた。
キックキックキックキックトントントン
[#ここで字下げ終わり]
写真が消えました。四郎はそっとかん子に云いました。
「あの歌は紺三郎さんのだよ。」
別に写真がうつりました。一人のお酒に酔った若い者がほおの木の葉でこしらえたお椀《わん》のようなものに顔をつっ込《こ》んで何か喰《た》べています。紺三郎が白い袴《はかま》をはいて向うで見ているけしきです。
みんなは足踏《あしぶ》みをして歌いました。
[#こ
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