になってしまひました。すると四郎が決心して云ひました。
「ね、喰べよう。お喰べよ。僕は紺三郎さんが僕らを欺《だま》すなんて思はないよ。」そして二人は黍団子をみんな喰べました。そのおいしいことは頬《ほ》っぺたも落ちさうです。狐の学校生徒はもうあんまり悦《よろこ》んでみんな踊りあがってしまひました。
 キックキックトントン、キックキックトントン。
 「ひるはカンカン日のひかり
  よるはツンツン月あかり、
  たとへからだを、さかれても
  狐の生徒はうそ云ふな。」
 キック、キックトントン、キックキックトントン。
 「ひるはカンカン日のひかり
  よるはツンツン月あかり
  たとへこゞえて倒れても
  狐の生徒はぬすまない。」
 キックキックトントン、キックキックトントン。
 「ひるはカンカン日のひかり
  よるはツンツン月あかり
  たとへからだがちぎれても
  狐の生徒はそねまない。」
 キックキックトントン、キックキックトントン。
 四郎もかん子もあんまり嬉《うれ》しくて涙がこぼれました。
 笛がピーとなりました。
『わなを軽べつすべからず』と大きな字がうつりそれが消えて絵がうつり
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