ちは密造罪と職務執行妨害罪と殺人罪で一人残らず検挙されるからさう思へ。」
 社長も鑑査役も実に青くなってしまった。しばらくみんなしいんとした。
 こゝだと署長が考へた。
「さあ、おれを殺すなら殺せ、官吏が公務のために倒れることはもう当然だ。」署長は大へんいゝ気持がした。といきなりうしろから一つがぁんとやられた。又かと思ひながら署長が倒れたらみんな一ぺんに殺気立った。
「木へ吊《つ》るせ吊るせ。なあに証拠だなんてまだ挙がってる筈《はず》はない。こいつ一人片付ければもう大丈夫だ。樺花《かばはな》の炭釜《すみがま》に入れちまへ。」たちまち署長は松の木へつるしあげられてしまった。村会議員が出て云った。
「この野郎、ひとの家でご馳走《ちそう》になったのも忘れてづうづうしい野郎だ。ゆぶしをかけるか。」
「野蛮なことをするな。」署長が吊られて苦しがってばたばたしながら云った。
「とにかく善後策を講じようぢゃないか。まあ中で相談するとしよう。」村長が云った。
 みんなは中へはひった。署長は木の上で気が遠くなってしまった。

      五、署長のかん禁

 しばらくたって署長は自分があの奥の室《へや》
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