「倒れているんだよ。動いちゃいけない。動いちゃいけないったら。」
狼《おいの》どもが気ちがいのようにかけめぐり、黒い足は雪雲の間からちらちらしました。
「そうそう、それでいいよ。さあ、降らしておくれ。なまけちゃ承知しないよ。ひゅうひゅうひゅう、ひゅひゅう。」雪婆んごは、また向うへ飛んで行きました。
子供はまた起きあがろうとしました。雪童子《ゆきわらす》は笑いながら、も一度ひどくつきあたりました。もうそのころは、ぼんやり暗くなって、まだ三時にもならないに、日が暮《く》れるように思われたのです。こどもは力もつきて、もう起きあがろうとしませんでした。雪童子は笑いながら、手をのばして、その赤い毛布《けっと》を上からすっかりかけてやりました。
「そうして睡《ねむ》っておいで。布団《ふとん》をたくさんかけてあげるから。そうすれば凍えないんだよ。あしたの朝までカリメラ[#「カリメラ」に丸傍点]の夢を見ておいで。」
雪わらすは同じとこを何べんもかけて、雪をたくさんこどもの上にかぶせました。まもなく赤い毛布も見えなくなり、あたりとの高さも同じになってしまいました。
「あのこどもは、ぼくのやったや
前へ
次へ
全14ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング