水仙月の四日
宮沢賢治

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)雪婆《ゆきば》んごは、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|疋《ひき》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)カリメラ[#「カリメラ」に丸傍点]のことを
−−

 雪婆《ゆきば》んごは、遠くへ出かけて居《を》りました。
 猫《ねこ》のやうな耳をもち、ぼやぼやした灰いろの髪をした雪婆んごは、西の山脈の、ちぢれたぎらぎらの雲を越えて、遠くへでかけてゐたのです。
 ひとりの子供が、赤い毛布《けつと》にくるまつて、しきりにカリメラ[#「カリメラ」に丸傍点]のことを考へながら、大きな象の頭のかたちをした、雪丘の裾《すそ》を、せかせかうちの方へ急いで居りました。
(そら、新聞紙《しんぶんがみ》を尖《とが》つたかたちに巻いて、ふうふうと吹くと、炭からまるで青火が燃える。ぼくはカリメラ鍋《なべ》に赤砂糖を一つまみ入れて、それからザラメを一つまみ入れる。水をたして、あとはくつくつくつと煮るんだ。)ほんたうにもう一生けん命、こどもはカリメラ[#「カリメラ」に丸傍点]のことを
次へ
全14ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング