考へながらうちの方へ急いでゐました。
お日さまは、空のずうつと遠くのすきとほつたつめたいとこで、まばゆい白い火を、どしどしお焚《た》きなさいます。
その光はまつすぐに四方に発射し、下の方に落ちて来ては、ひつそりした台地の雪を、いちめんまばゆい雪花石膏《せつくわせきかう》の板にしました。
二|疋《ひき》の雪狼《ゆきおいの》が、べろべろまつ赤な舌を吐きながら、象の頭のかたちをした、雪丘の上の方をあるいてゐました。こいつらは人の眼には見えないのですが、一ぺん風に狂ひ出すと、台地のはづれの雪の上から、すぐぼやぼやの雪雲をふんで、空をかけまはりもするのです。
「しゆ、あんまり行つていけないつたら。」雪狼のうしろから白熊《しろくま》の毛皮の三角帽子をあみだにかぶり、顔を苹果《りんご》のやうにかがやかしながら、雪童子《ゆきわらす》がゆつくり歩いて来ました。
雪狼どもは頭をふつてくるりとまはり、またまつ赤な舌を吐いて走りました。
「カシオピイア、
もう水仙《すゐせん》が咲き出すぞ
おまへのガラスの水車《みづぐるま》
きつきとまはせ。」
雪童子はまつ青なそらを見あげて見えない星に叫びまし
前へ
次へ
全14ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング