。」
「早くいつしよに北へ帰りたいね。」
「ああ。」
「さつきこどもがひとり死んだな。」
「大丈夫だよ。眠つてるんだ。あしたあすこへぼくしるしをつけておくから。」
「ああ、もう帰らう。夜明けまでに向ふへ行かなくちや。」
「まあいゝだらう。ぼくね、どうしてもわからない。あいつはカシオペーアの三つ星だらう。みんな青い火なんだらう。それなのに、どうして火がよく燃えれば、雪をよこすんだらう。」
「それはね、電気菓子とおなじだよ。そら、ぐるぐるぐるまはつてゐるだらう。ザラメがみんな、ふわふわのお菓子になるねえ、だから火がよく燃えればいゝんだよ。」
「ああ。」
「ぢや、さよなら。」
「さよなら。」
三人の雪童子《ゆきわらす》は、九疋《くひき》の雪狼《ゆきおいの》をつれて、西の方へ帰つて行きました。
まもなく東のそらが黄ばらのやうに光り、琥珀《こはく》いろにかゞやき、黄金《きん》に燃えだしました。丘も野原もあたらしい雪でいつぱいです。
雪狼どもはつかれてぐつたり座つてゐます。雪童子も雪に座つてわらひました。その頬《ほほ》は林檎《りんご》のやう、その息は百合《ゆり》のやうにかをりました。
ギラ
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