る
平らだけれどもここからは
月のきれいな円光が
楢の梢にかくされる
わたくしはまた空気の中を泳いで
このもとの白いねどこへ漂着する
月のまはりの黄の円光がうすれて行く
雲がそいつを耗らすのだ
いま鉛いろに錆びて
月さへ遂に消えて行く
……真珠が曇り蛋白石が死ぬやうに……
寒さとねむさ
もう月はたゞの砕けた貝ぼたんだ
さあ ねむらうねむらう
……めさめることもあらうし
そのまゝ死ぬこともあらう……
誰かまはりをあるいてゐるな
誰かまはりをごくひっそりとあるいてゐるな
みそさざい
みそさざい
ぱりぱり鳴らす
石の冷たさ
石ではなくて二月の風だ
……半分冷えれば半分からだがみいらになる……
誰か来たな
……半分冷えれば半分からだがみいらになる……
……半分冷えれば半分からだがめくらになる……
……半分冷えれば半分からだがめくらになる……
そこの黒い転石の上に
うす赭いころもをつけて
裸脚四つをそろへて立つひと
なぜ上半身がわたくしの眼に見えないのか
まるで半分雲をかぶった鶏頭山のやうだ
……あすこは黒い転石で
みんなで石をつむ場所だ……
向ふはだんだ
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