ひとびとの視官を眩惑いたします
或は燃えあがるボヘミヤの玻璃
すさまじき光と風との奏鳴者
そも氷片にまた趨光の性あるか
はた天球の極を索むる泳動か
そらのフラスコ、
四万アールの散乱質は
旋る日脚に従って
地平はるかに遷り行きます
その風の脚
まばゆくまぶしい光のなかを
スキップといふかたちをなして
一の黒影こなたへ来れば
いまや日は乱雲に落ち
そのへりは烈しい鏡を示します
[#改ページ]
五〇四
[#地付き]一九二五、四、二、
硫黄いろした天球を
煤けた雲がいくきれか翔け
肥料倉庫の亜鉛の屋根で
鳥がするどくひるがへる
最後に湿った真鍮を
二きれ投げて日は沈み
おもちゃのやうな小さな汽車は
教師や技手を四五人乗せて
東の青い古生山地に出発する
……大豆《まめ》の玉負ふその人に
希臘古聖のすがたあり……
積まれて酸える枕木や
けむりのなかの赤いシグナル
[#改ページ]
五〇六
[#地付き]一九二五、四、二、
そのとき嫁いだ妹に云ふ
十三もある昴の星を
汗に眼を蝕まれ
あるいは五つや七つと数へ
或いは一つの雲と見る
老いた野原の師父たちのため
老いと病ひにな
前へ
次へ
全106ページ中75ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング